新年のご挨拶


公益財団法人 全日本空手道連盟
会長 笹川 堯

新春を寿ぎ、謹んで新年のご挨拶を申し上げます

旧年中に賜りましたご理解ご協力に対しまして厚く御礼申し上げますとともに、
本年も一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

◇平成時代の掉尾を飾る全日本選手権大会

平成の時代が大団円を迎えようとしています。昨年12月、平成時代の掉尾を飾って第46回全日本空手道選手権大会が、日本武道館において行われました。2020年の東京オリンピック競技の空手会場となる場所での大会に参加選手の士気はいやがうえにも高揚していることが伝わる白熱した大会となりました。

思い起こせば、平成28年の第44回全日本大会実施に際して、空手道界永年の夢でありました天皇盃・皇后盃の賜盃を両陛下より賜わったばかりでなく、天皇陛下自らご臨席を賜り、ご高覧いただきました日のことを感激とともに、昨日のことのよう思い起こされます。

空手道は、沖縄を発祥の地として広く日本国民に普及すると同時に、世界各国へ空手を広めていただいた多くの日本人指導者の努力もあり、2020年東京オリンピックに正式種目として採用されました。私ども全空連では、東京オリンピックを成功させることはもちろん、2024年のパリ・オリンピック、2028年のロサンゼルス・オリンピックにおいても空手が採用されるよう活動を続けているところであります。

空手がオリンピック種目として採用されたことによって、空手道の正しい理解がこれまでとは比べものにならないほど進んだと感じております。また、この機会をとらえて多くの方々が健康の維持増進をはかり生活を豊かにし、生涯にわたって実践できる、いわゆる生涯空手道の推進運動を広めていきたいと思っております。

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平成28年第44回全日本空手道選手権大会に天皇陛下のご臨席を賜った

◇エスピノス世界連盟会長 秋の叙勲で旭日重光章を受章

平成30年秋の叙勲において、空手界においては外国人初となる旭日重光章を世界空手連盟(WKF)のアントニオ・エスピノス会長が受章しました。エスピノス氏は、スペインのマドリード市出身で空手道の修行を重ねるにつれ、その技術の奥深さに魅力を感じるとともに日本への関心を深めていきました。そうした中、昭和46年から49年までの三年間、スペインの空手ナショナルチームのメンバーとして活躍し、1993年にWKF会長に就任しました。以後、25年の永きにわたって空手の世界的普及に尽力しました。

日本への功績としては、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と会談して2020年東京オリンピック競技大会空手競技採用において、空手の歴史や競技としての魅力を説明し、正式競技に空手が入ることの必要性・重要性を唱えました。さらに、平成27年、東京オンピック・パラリンピック競技大会組織委員会による追加競技選考ヒアリングに出席し、空手の歴史や競技としての魅力を説明したことが功を奏して、東京組織委員会がIOCへ提案するに至りました。

その後、平成28年8月3日に開催されたIOC総会において、2020年東京オリンピック追加競技として空手が正式に承認されたのです。このように、様々な場面で精力的かつ献身的な活動を展開してきた成果として追加種目に決定したことは、エスピノス会長の功績として認められ、旭日重光章の受章に至ったものであります。
全空連としても大いに誇りとするところであり、誠に喜ばしいことでありました。

◇オリンピックへの道のりー東京からパリへー

―武道議員連盟第7回総会―

昨年11月に、国会議員による武道議員連盟の総会が行われ、次のような決議文が採択されました。『2024年に開催されるパリ・オリンピックにおいて空手が正式採用されるよう空手道推進議員連盟として、関係閣僚(内閣総理大臣、官房長官(空手道推進議員連盟会長)五輪担当大臣、文部科学大臣等)からフランス共和国首相、パリ・オリンピック組織委員長あてに推薦状を出すことを強く求める。』というものです。推薦状が1月から始まるプレミアリーグ・パリ大会に間に合えばわたくしが持参して直接関係者に手渡したいと思っております。

空手道推進議員連盟の支援は誠に、頼もしくありがたいことであります。

―ユースオリンピック初参戦―

日本スポーツ振興センターのオリンピアンの発掘・育成事業として「次世代ターゲットスポーツの育成支援事業」が平成28年よりスタートしました。ジュニア選手を発掘し、日本代表レベルまで導くことで日本チームのレベルアップを目指すというものです。

全空連は、東京オリンピックの成功と金メダル獲得を目標とするとともに、この育成支援事業を東京大会の先のオリンピックを見据えたプロジェクトであると位置づけ、これを実施してまいりました。早々の成果として昨年10月17・18日アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された「第3回ユースオリンピック競技大会」において空手競技が初めて実施され、33の国と地域から48名が参加しました。日本から次世代を担う若武者男女各3名、計6名が組手6種目に出場、金メダル1個、銀メダル3個を獲得して参加国中最高の成績を収め、幸先の良い滑り出しとなりました。

◇中学校武道必修化の現状

平成24年度から、中学校で武道の必修授業が実施され、7年が経過いたしました。
武道を学校における教科体育の内容として重視していくことは、我が国の文化や伝統を尊重する観点はもとより、これからの国際社会において、世界に生きる日本人を育成していく立場からも大変価値あるものです。授業を受ける中学生が安全に、楽しく、空手道に触れることによって生涯武道の動機づけとなる側面も大いに期待できるものです。

平成28年に日本武道館と全空連が発行した『中学校武道必修化指導書』は誠に効果的であり、空手道においても少しずつではありますが授業に採用する中学校が増えております。武道授業以外においても総合学習の時間での採用や、オリンピックに採用された空手道を知ろう・体験してみよう、といった機運が小・中学校においても高まっております。

全空連では、中学校武道必修の中で「健康と安全に配慮した空手道」の特性に誇りと自信をもって、全国の中学生が空手道に触れる機会を増やしていきたいと思っております。47都道府県連盟及び各加盟団体におきましても、一層のご尽力をお願いいたします。

結びに、今年1年が会員の皆さんにとって、お元気で活躍される年でありますよう期待するとともに、皆さんのご家族のご健勝とご多幸を祈念致しまして、私の新年の挨拶とさせて頂きます。ありがとうございました。